wonderteaのまとめ置き場

読書関係で気になったことを調べてまとめています。SF・ミステリ・眉村卓など。時々二次創作。

植民省庶務二課

前回に続いて眉村卓作品中の女性の登場人物について考えてみます。今回は人外を中心に。古い作品はネタバレ気味かも。
◆眉村作品の元気のいい女性キャラクターはやっぱり夫人の投影だったのでしょうか。いつもボーっとした主人公の背中をドンと押して、さっさと先を歩いてゆく。「ついてきたかったら、ついてくれば?」とでも言いたげに颯爽と立ち去る彼女たち。
◆未来の婚姻形態を描くとき、「契約」という形式が多いのも、こういう女性たちに入籍だの尽くす女だのは似合わないからか。むしろ君が尽くせ!

  • ユカリ 「わがセクソイド」(角川文庫)

娼婦として開発されたアンドロイド。サラリーマンの年夫となじみになるが、再調整されて彼のことを忘れてしまう日が近づいていた。一方、青春の志を忘れられない年夫は思いきった行動に出る。
★わりと勘違いしがちだけど、このユカリが忠実なのは通ってくるお客に対してではなくて、自分の中のプログラム「人間に奉仕する」ということに、なんだよね。そこがいじらしい。ロボットの中でもおちこぼれというところもツボ。だんだん機能が狂っていって年夫ひとすじ!に壮絶な結末を迎えるけど、これも「人間全般」から「個人」にプログラムが変わってしまっただけのことなんだよな、ロボットにとっては。社会描写なんかがリキ入ってて今読むとアレだが、ユカリちゃんめあてで私は年に1回くらいは読み返す小説。

  • シノニア 「かれらの中の海」(講談社文庫)

地球を監視にきた銀河連邦職員の一人で人間に酷似した外見をもつ宇宙人。地球人を見下していたが、自殺しようとしていた晴夫と協力して地球に有利な方向へ社会を導こうとする。
★セクハラオヤジは銃殺刑!って感じの地球に不慣れな頃がかわいい。いやあのね姐さん……。ラストは地球で生きる意欲に燃えて晴夫をどやしつけてるし。美人OL和田律子も生きるためには何でもするしたたかさが、いい(男性作家の中には女に汚れ役をやらせない人もいるがそれはなんか違うぞ)。本編は環境問題を先取りしたシリアス社会派SFなところがみどころ……だったんだろうけど、今読むと銀河連邦司令が中間管理職っぽいとか、そっちのほうがおもしろい。

  • パキーネ 「わがパキーネ」(収録:「人獣怪婚」ちくま文庫・「重力地獄」角川文庫)

宇宙人ユーカロ族の一人で地球にホームステイしている。金銭目当てでホスト役を引き受けたテツヤにはだんだん彼女が美しく見えてくるが……。
★眉村作品は、宇宙人と接触が始まってからのあれこれを描く「セカンド・コンタクト」ものに傑作が多い気がします。これもそんな設定。容姿がみにくいと思われることを気にしない、というのが潔い。別れのシーンはせつないねえ。関係ないけどラストで「郵便は政府関係からか星間連絡くらいなものだ」という記述があって、メール全盛の今を予測していたみたいだ。あと、食事をつくる独身男に感心。

  • エレン・エレスコブ 「不定エスパー」(徳間文庫)

名家令嬢。不定エスパーのイシター・ロウの雇い主。反政府運動などに関わり護衛を必要としていた。
★いやあ、お嬢様なのにこの行動力。かっこいい。普通のお嬢様は政治活動やアジ演説なんかしません。8巻もの長さを支えたのも魅力的な女たちあってこそ。ラストシーン、いいなあ。ロウ、この幸せ者〜。パイナン隊長が男前だと証言してくれたのもこの方。「男前」って言葉がこの人の口から出るのも想像するとおかしいんだけど。

  • シェーラ 「不定エスパー」(徳間文庫)

エレスコブ家の使用人。護衛員たちの世話係、実は……?
★初めにロウに近づくシーン、笑っちゃいました。眉村作品で珍しく色仕掛けが見られます!?(←うそは言っていない)主人公のピンチにあらわれ助けて去っていく。いいじゃないですか。この作品、女たちがみんなしてロウをいじり倒す小説なんだろうか……。