wonderteaのまとめ置き場

読書関係で気になったことを調べてまとめています。SF・ミステリ・眉村卓など。時々二次創作。

「ビッグ・タレント」シリーズ

ビッグ・タレント……芸術全般に優れた芸能人。回りにブレーンの「ルーム員」を集めて活動する。ルーム員から新しいタレントが生まれる。マスコミに自分を売ることが職業なのでいつも疲れている。先生とよばれ、面会時間をチケット制で売ったりもする(人気に応じて値段が上下するシビアな世界)。

書かれた当時の日本に密着しすぎた設定のせいか、今となっては泥臭い印象が強い。しかし、この生まじめさが眉村作品の魅力。

作品タイトル(「収録書名」版元,発行年 新=ハヤカワSFシリーズ新書版)

  • 「契約締結命令」(収録:「万国博がやってくる」早川新,68)

登場タレント:高原俊児
「無任所要員」参照

  • 「よじのぼる」(収録:「虹は消えた」早川新,69/「サロンは終わった」早川,74)

登場タレント:大牟田暁一,植野和也
大牟田の人気を不動のものとするためヤラセでルーム員から若手タレントに成り上がった植野。やがて本当に野心を抱くようになり……暗いムードの漂うラスト。やめときゃいいのに、といいたくなった。あとがきによるとハッピーエンドを初めは考えていたらしいのだが、検討の結果こうなったとのこと。

  • 「ぼくの場合」(収録:「虹は消えた」早川新,69/「サロンは終わった」早川,74)

登場タレント:無し
ビッグタレントそのものは登場しないが、主人公の「ぼく」はルーム員養成所の講師もしている、というくすぐりが入る。にやりとする瞬間。超過労社会の話。

  • 「EXPO’87」(収録:EXPO’87 早川新/早川文庫/角川文庫 ,68/73/78)

登場タレント:朝倉遼一
1987年、東海道メガロポリスで開催される万博。この展示品「実感装置」を巡って産業界は揺れていた。そこに現れた謎の「産業将校」と呼ばれる者が朝倉と対決する……この作品はその他にも眉村キャラクターオンパレード!の中間決算的作品。

    • 「無任所要員」(前回特集参照)のパイオニア・サービスは中之島財閥の系列だということが分かる。
    • 「クイズマン」(収録:「準B級市民」 早川新 72/ 「産業士官候補生」 早川/角川 74/78 )はビッグタレントのなり損ない。
    • 「家庭管理士」(収録:「ながいながい午睡」 三一書房新 68 )も世間に広まっている。等級がある。