wonderteaのまとめ置き場

読書関係で気になったことを調べてまとめています。SF・ミステリ・眉村卓など。時々二次創作。

「無任所要員」シリーズ

無任所要員……それは国家さえも動かす万能サービス業者「パイオニア・サービス会社」の裏工作を受け持つ特別社員である。その一人、杉岡勉は不特定の任務を請け負うことを誇りとしていた。今日も彼に部長からの命令が下される!!
この会社がまた、あくどいんだな。司政官シリーズの連邦経営機構といい勝負である。

社会派SFですが、割と軽い感じの導入部が多く、石原藤夫の「惑星シリーズ」を彷彿とさせます。どちらかというと杉岡は主人公ではなく狂言回しのような役割。主人公がひどい目に遭うのを端で見ている。

作品タイトル(「収録書名」版元,発行年 新=ハヤカワSFシリーズ新書版)

  • 「工事中止命令」(収録:「産業士官候補生」早川文庫/角川文庫,74/78・「万国博がやってくる」早川新,68)

南米の某国でロボットによる工事が行われていた。が、採算が合わないため発注した業者は工事を中止しようとする。そのため杉岡は頑固な工事用ロボットの総帥を説得しなければならない……。この1号(ロボットの名前)は実体があるだけにSQ1より始末に負えないのだ。最後の「よきライバルだった」感がいかにも。前半の部長との軽妙な会話はなかなか楽しい。

  • 「虹は消えた」(収録:「産業士官候補生」早川文庫/角川文庫,74/78・「虹は消えた」早川新,69)

杉岡はベテラン所員・大塚と組んでアフリカのある小国を復興させよとの命令を受けた。「虹の玉」を製造して、経済を立て直し、王妃に気に入られた大塚は貴族になったが……。若者と中年の断絶が隠しテーマ?本文の構成も凝っている。
虹の玉は反応卵(@引き潮のとき)っぽい。こういうガジェット好きなんだろうな。

  • 「最後の手段」(収録:「産業士官候補生」早川文庫/角川文庫,74/78・「虹は消えた」早川新,69)

イオニア・サービスの専門社員南条は無任所要員の杉岡とサイボーグ医療に関するプロジェクトを進めることになった。しかし有力者だけを救う医療だと知った南条は辞職し、良心派の医師と組んで会社を敵に回す……今回は杉岡は脇役。しかし暗躍する無任所要員の実力と、なにがあろうと会社にとどまることの哀しさを見事に表している……?

  • 「契約締結命令」(収録:「万国博がやってくる」早川新,68)

すでにベテランとなった杉岡と新人森田は、ビッグ・タレントの高原とパイオニア・サービスとの専属契約を結ばせようとしていた。森田は高原に近づいてチャンスをうかがうが……冒頭の杉岡の上司へのグチが眉村作品には珍しい。そして、ラストの一行にはあっけにとられること請け合い。一抹の寂しさというか、やけっぱちを感じることでしょう。この作品だけは文庫未収録で手に入りにくいです。


※「契約締結命令」ネタバレあらすじ※




すでにベテランとなった杉岡と新人・森田は、ビッグ・タレント(何でもこなす芸能人兼芸術家)の高原とパイオニアサービスとの専属契約を結ばせようとしていた。杉岡に対抗意識を持つ森田は独断で高原に近づいてチャンスをうかがうが、失敗する。だが、高原が破いた契約書には杉岡の配慮により薬がしみこませてあったのだ。気を失っている内にセクソイドロボットの虜となった高原は意のままに操れるはずだった。

やがて、森田も経験を積んだ頃、再び杉岡に会う。彼の話によると高原はロボットにのめり込み、ノイローゼが高じて廃人同様になり死んだという。ビッグ・タレントなど消耗品であり、自分たちのようなインサイダーこそが社会に役立つのだ、たいしたことはない、と森田に説く杉岡。そして……森田も、そのとおりだと思うのであった。