wonderteaのまとめ置き場

読書関係で気になったことを調べてまとめています。SF・ミステリ・眉村卓など。時々二次創作。

ちょっと今から連邦やめてくる

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トド・カーツ元巡察官の話

え、あのラクザーン住民移転の件を取材してるんですか。退職したとはいえ守秘義務がありますから、公表されている以上に話せることはないんですよ。

そういえばもう1325星系は立入禁止になってますね。あの何事にもそつのないSQ1も停止してしまったのかな。あそこのロボット官僚たちは本当に統率が取れていて、訪れたことのある惑星のなかでもとりわけ見事な仕事ぶりでした。

それより私のことを知りたい? 巡察官に興味を持たれることは少ないので珍しいですね。たいしたエピソードはないんですが……。

巡察官は志望してなったんですよ。ご存知のように養成は途中まで司政官と同じ課程で、ロボット制御などの基礎を学んでからわかれます。教官の勧めや心理テストの結果で振り分けられる同期もいましたが、出世コースということで希望する人もあのころは多かったですね。

私は出世にはそれほど興味はなかったんですが、旅行が好きで。平凡な植民星の出身なので、巡察業務なら知らない世界に行けるんじゃないかって、単純な動機でした。確かに個人では行けない惑星をいろいろ回って、たまに息抜きに観光するのもよい経験でした。いちおう日程には休暇も含まれてますからね。

そして仕事にも慣れ中堅といわれるようになったころ、ラクザーン行きを命ぜられたんです。期間は定めなしということで、結局地球年の4年と少し滞在しました。

この巡察では新任司政官に対応することになってまして。自分の新人の頃を思い出すとなるべく力になってやりたいと思ってました。まあ、ああいう結果になってしまったわけですが。

そのこと自体を悔やんでいるわけじゃないんですよ。おたがい仕事ですからね。彼に恨まれることは仕方ない。ただ、後任のベテラン司政官から向けられた視線はね……こたえました。お前のやってることは連邦の狗か、と。いや直接言われたわけじゃないですが、そういうのは伝わってくるもんです。途中まで司政官と同じ課程にいたこともあって、業績が教材になるような人物といっしょに仕事ができることを光栄に思ってました。それなのに――ま、薄々自分でも思っていたことを突きつけられたということです。

というわけで、私は連邦職員を辞めました。しばらくは退職金もあるし使う暇のなかった給料も貯まっていたしで、あちこちの世界を旅してたんですが、ある日ふと、あの移転先ノジランはどうなったのかなと気になりました。自分の過去にケリをつけたかったのかもしれません。

到着してみると、その頃には住民はもうすっかり新しい生活を始めてました。で、開業したばかりのノジラニア軌道をのぞいてみたんです。巡察のときに聞き込みをしたこともある元公社が移転して出来た運輸会社で、こちらでも手広くやっているようでした。やり手の女性幹部も相変わらずだと思ったことを覚えています。

それで私のことですか? 彼女に求められていろいろアドバイスをしているうちに……結局ノジラニア軌道に居着くことになってしまって。形ばかりの役職をもらって、観光事業開発担当ということになってます。どこかお勧めの景色のいい惑星があったら教えてください。わが社の商品にしたいと思ってますのでね。その前に私が行って見てきますよ。

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あんたが辞めるんかい、というツッコミ待ちの話。
「インタビュー記事」のパロディが書きたかった。

初登場のところでマセよりだいぶ年上、とあるけどイメージ的に30代後半ぐらい?(マセ20代後半のイメージ)PKA4だから新人のマセのPPKA4と同格でそんなに年は離れてないんじゃないか、と思うんだけど出世に興味ない人なのかも。

設定としては巡察の途中で公社であるツラツリ交通とも接触があったということで。目ざといイルーヌはマセに逃げられたのでこの人を採用して新司政庁との交渉に利用したりしたのでしょう。2人が契約を結んだかは知りません。

(初稿:2020/02/12)