wonderteaのまとめ置き場

読書関係で気になったことを調べてまとめています。SF・ミステリ・眉村卓など。時々二次創作。

SQ1日誌1・ラクザーン残日録

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「マーダーボット・ダイアリー」(マーサ・ウェルズ/創元SF文庫)がおもしろかったのでロボットの日記ありだなと思って考えた『消滅の光輪』ネタ。大阪生まれの眉村卓氏に敬意を表して大阪弁でやりたかった(が、ネイティブじゃないので難しい)。

はじめに

この1325星系唯一の惑星から全住民が退避して1公転年が過ぎた。私たちロボット官僚は司政官も奉仕すべき知的生命体もいなくなり、暇になった。部下たちのほとんどは休止にしてある。植民者移転についての公式記録は既に送付・受理されているが、太陽の新星化が進むまで、私――SQ1自身の記録を出力してみようと思う。人間もすなる日記といふものを。

○月×日

私と部下たちがこのラクザーンに配置されておよそ50地球年たった頃のことだ。連邦中枢からここの太陽が新星化する、というデータを得たのである。
それまで、私たちは連邦の方針に従いこの世界を発展させ、何代かの司政官を受け入れてきた。時折巡察官や実習生もやってきて、去っていった。

植民者移転について司政官と検討を始めた頃、あの事故が起きた――SQ2Aと司政官が死亡したのだ。SQ3Aに任せた工事で発生した無人機の墜落事故だが、私の記録には納得のいく詳細が見当たらない。SQ2Aは新しい体に記憶を移植でき、ほぼ復旧させることができた。われわれの記憶は財産である。

司政官の補充を申請したところ、即座に後任が決定したようだ。連邦中枢の思考機関が選んだ新任司政官で担当惑星を持つのは初めてだという。植民者移転を実行するとなると彼にはかなり負担がかかりそうだ。

この移転計画は私たちにとって最後の仕事になるだろう。連邦はロボットを放棄するであろうから。しかしそれには関わりなく、私は全力でつとめあげる所存である。

○月×日

巡察官が来着するという連絡が来た。なお、船にはもう一人連邦関係の同乗者がいるとのことである。通信可能域に入ったので改めてその同乗者の氏名、経歴、目的等を問い合わせたのだが、拒絶された。極秘のため、宙港到着時に明らかにするとのことである。司政機構の領域に目的の知れない者を入れるのは私の規範にそぐわない。到着後に徹底的にしめたるわ。

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